2024年アジアにおけるCBDCの進展について知っておくべきこと
2024年アジアにおけるCBDCの進展について知っておくべきこと
2024年、アジアの多くの中央銀行が**中央銀行デジタル通貨(CBDC)**の開発に注力しており、いくつかの中央銀行は物理通貨の代替となる可能性のあるCBDCのテストを続けている。
TRM Labsの上級政策顧問であり、シンガポール金融管理局(Monetary Authority of Singapore)の元規制担当者であるアンジェラ・アン(Angela Ang)は次のように述べている。「アジアの中央銀行にとっては通常通りの業務が続いており、CBDCのパイロットプロジェクトに引き続き投資している。」
プロジェクトmBridgeの進展
アンは、初期のクロスボーダーCBDCプロジェクトの1つであるプロジェクトmBridgeが、最小限の機能を持つ製品(MVP:Minimum Viable Product)としてのステータスを達成したことが「非常に重要なマイルストーン」だと指摘した。このプロジェクトは、2024年6月にMVPステータスに到達し、初期採用者が使用できる機能を提供する段階に進んだ。
mBridgeは、国際決済銀行(BIS)、香港金融管理局(HKMA)、中国、タイ、UAEの中央銀行によって開始され、卸売型のクロスボーダー決済のための共通のマルチCBDCプラットフォームを実験している。このプラットフォームは、**イーサリアム仮想マシン(EVM)**と互換性があり、価値のある取引を行い、他のプラットフォームとの相互運用性をテストできることが特徴だ。
しかし、BISはmBridgeが運用の成熟には何年もかかるだろうとし、「したがって、アジア地域におけるCBDCの広範な使用はおそらく数年先のことになるだろう」とアンは述べている。
香港のe-HKDパイロットの拡張
2024年8月、**香港金融管理局(HKMA)**は、プロジェクト・アンサンブルという卸売型CBDCプロジェクトのサンドボックスを開始し、伝統的な金融業界におけるトークン化のテストが進んでいる。HKMAは、このサンドボックスが銀行間決済を実験的なトークン化されたお金で行うためのものだと説明した。
サンドボックスが初めに焦点を当てる4つの分野は、債券および投資ファンド、流動性管理、グリーンおよび持続可能な金融、そして貿易およびサプライチェーン金融である。プロジェクト・アンサンブルは、e-HKDのパイロットの第二段階として、プログラム可能性、トークン化、原子的決済を研究するために設立された。
中国のe-CNY採用の課題
中国のCBDCであるe-CNYは、広範な採用において長らく課題に直面している。その理由は、AlipayやWeChat Payなど、すでに普及しているキャッシュレス決済手段と競合しているからだ。しかし、今年中国当局はe-CNYの採用を促進するために、追加の試験を実施してきた。
特に、2024年5月に**香港金融管理局(HKMA)と中国人民銀行(PBoC)は、e-CNYのパイロットを香港で拡大し、香港のFaster Payment System(FPS)**と連携させた。この取り組みによって、ユーザーはいつでもどこでもe-CNYウォレットをチャージでき、香港住民は中国本土での商業支払いが可能となった。
2024年6月末時点で、e-CNYの累積取引量は**7兆元(約9667億ドル)**に達した。
シンガポールのCBDC試験
シンガポールもまた、卸売型CBDCのテストに取り組んでいる。2024年11月、**シンガポール金融管理局(MAS)**は、金融機関が「共通決済資産」としてSGD卸売型CBDCにアクセスできるようにすることを計画していると発表した。このテストネットでは、CBDCの発行、転送、償還が行われ、今後、中央銀行および商業銀行の負債に関する他の形式への拡張が検討される予定だ。
まとめ
2024年、アジアではCBDCの開発が進んでおり、特に香港、中国、シンガポールなどでの取り組みが注目されている。これらの国々は、中央銀行デジタル通貨のテストを進め、金融システムのデジタル化を加速させている。しかし、広範な採用には時間がかかることが予想され、特に中国のe-CNYや香港のe-HKDは、課題に直面しながらも着実に進展している。
用語説明
- CBDC(Central Bank Digital Currency): 中央銀行が発行するデジタル通貨。物理的な通貨の代わりとして使用される。
- MVP(Minimum Viable Product): 最小限の機能を持つ製品。最小限の機能が実装されており、初期のユーザーに提供可能な段階。
- トークン化: 物理的な資産や情報をデジタルのトークンとして表現する技術。
- FPS(Faster Payment System): 香港のリアルタイムで即時に決済を行うシステム。
注意書き:仮想通貨の取引はリスクが伴い、当記事は投資のアドバイスを目的としたものではありません。当サイトでは一切の責任を負いませんので、自己責任において行ってください。
参考元:crypto.news