
ビットコインと日本国債──世界経済を動かす「JGB利回り」の静かな台頭
仮想通貨ビットコイン(Bitcoin/BTC)は、これまで米国株式市場との連動性が注目されてきた。しかし近年、その値動きが意外な対象と強く結びついてきている。それが、日本の**超長期国債(Japanese Government Bonds:JGBs)**である。
とりわけ注目されているのは、日本の30年物国債の利回りとの相関である。
この興味深い関係性を指摘しているのが、グローバル市場アナリストであり「Across The Spread」の創設者である**ウェストン・ナカムラ(Weston Nakamura)**氏(@acrossthespread)だ。
ビットコインは「リスク資産」からの乖離を始めた
ナカムラ氏によれば、2024年のある時点から、BTCの価格変動が米ナスダック100などのリスク資産と乖離し始め、日本国債の利回りと一致する傾向を強めているという。
実際に、2024年には以下のようなイベントがあった:
- 米国でのBTC現物ETF上場
- トランプ元大統領の再選出馬発表
これらのイベント時には一時的にビットコインが高騰する場面が見られたが、その後はJGBの利回り変動と歩調を合わせる形で価格が推移している。
米国ではなく、日本の金利が世界市場を動かす?
ナカムラ氏は、この動きが単なる**米国債利回り(UST)**の副次的影響ではなく、日本市場固有のメカニズムによる直接的な影響だと主張している。
その根拠として、米財務省高官**スコット・ベセント(Scott Bessent)**の発言を紹介。ベセント氏は、米国債利回りは米国内の政治的混乱ではなく、日本を含む世界的な力学に影響されていると明言している。
この仮説が正しいならば、「米国の政策が10年債利回りを中心に設計されている」とするならば、そしてその利回りが日本国債に影響されているならば──日本が間接的に米国のマクロ経済政策を左右している可能性すらあるのだ。
あらゆる資産クラスに影響を与えるJGB
ナカムラ氏は最後にこう述べている。
「日本国債は今や、仮想通貨から株式、為替、金市場に至るまで、世界の金融市場における中核的存在となっている。どの資産に投資しているにせよ、日本の動向を見逃してはならない」
これまで軽視されがちだった日本の債券市場が、世界のクロスアセット相関(複数の資産クラス間の関連性)において、過剰な影響力を持ち始めていると警鐘を鳴らしているのだ。
まとめ
- ビットコインは今や米国株よりも日本の長期金利に連動する傾向を見せている
- これは単なる偶然ではなく、日本の市場構造がもたらす国際的影響である可能性が高い
- 米国のマクロ経済政策が、日本の金利に左右される時代が来ているかもしれない
- 投資家はどの資産クラスであれ、日本国債の動きに注目すべき段階に来ている
用語説明
- JGB(Japanese Government Bond):日本国債の略称。特に30年債などの長期国債が機関投資家に注目される。
- 利回り(Yield):国債など債券の投資収益率のこと。市場の金利指標としても使われる。
- BTC ETF(Bitcoin Exchange-Traded Fund):ビットコインに連動する金融商品。2024年に米国で現物型ETFが上場された。
- クロスアセット相関(Cross-Asset Correlation):異なる資産クラス間で起こる価格の連動性のこと。
注意書き
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