トークン化がもたらす真の課題──「次に何をトークン化するか」より「どうやって使いやすくするか」
※本記事はcrypto.news寄稿者の見解であり、編集部の公式意見ではない。
2025年現在、**トークン化(Tokenization)**はもはや投機的な実験ではない。
この10年間、暗号資産業界はひとつの問いを繰り返してきた。
「次は何をトークン化すべきか?」
その結果、ステーブルコイン、金、不動産、カーボンクレジット、米国債──ありとあらゆる実世界資産がブロックチェーン上に登場し、数十兆円規模のオンチェーン経済が形成されている。
トークン経済は急拡大中
- ステーブルコインは**2024年だけで27.6兆ドル(約4,174兆円)**を処理し、Visaなどの決済大手を凌駕
- トークン化された米国債は**70億ドル(約1.06兆円)**を突破(主導:BlackRock、Franklin Templeton)
- コモディティ(商品)やプライベート債権のトークン化も拡大中
それでも、根本的な問題が残る
「暗号資産の仕組みは、一般の人々にとって複雑すぎる」
現在でも、多くのユーザーにとって暗号資産とのやりとりは**「ヘッドアップディスプレイなしで高速道路を運転するようなもの」**に感じられる。
とくに発展途上国では、資金の出金(オフランプ)が困難なケースも多く、本来の「誰でも金融にアクセスできる世界を実現する」という理念が霞んでしまっている。
初期理念を思い出すとき
- PAX Gold(PAXG)、Tether(USDT)、USDCといった安定資産の整備
- BTC(ビットコイン)やETH(イーサリアム)のETF(上場投資信託)化
これらは先進国では歓迎されているが、本来の目的──すなわち「銀行口座を持てない人々に金融アクセスを与える」という課題は依然として未解決である。
今後の焦点は「アクセシビリティ」
これからの優れた起業家は、「次に何をトークン化するか」ではなく、
「どうやって誰でも簡単に使えるようにするか?」
にフォーカスするだろう。
複雑なインターフェースやガス代(手数料)問題を解決しない限り、数兆円規模の成長が見込まれる市場であっても、一般層への広がりは限定的である。
まとめ
トークン化は、金融・資産のデジタル革命を象徴する存在だ。しかし今問われているのは**技術ではなく、「誰のための技術か」**である。
利便性や直感的な体験設計を無視すれば、真の意味での「分散型金融(DeFi)」は実現しない。
用語説明
- トークン化(Tokenization):現実世界の資産(株式、金、不動産など)をブロックチェーン上のデジタル資産(トークン)として発行すること。
- オンチェーン経済:ブロックチェーン上で完結する経済活動。送金・取引・融資など。
- オフランプ:仮想通貨を法定通貨に戻す(現金化する)手段。
- ステーブルコイン:米ドルなどに連動し、価格変動が少ない仮想通貨。
注意書き
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